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魔法科のネタバレはもちろん、比較される「φシリーズ」「アクセルワールド」「Fate/stay night」等もサラっとネタバレしますのでご注意ください!
話がちょっと(だいぶ?)飛びますが、中学生の頃からずっと続きを待っている「飾られた記号」(佐竹彬/電撃文庫)に始まる「φシリーズ」という作品がありまして、こちらでは人間一人ひとりが「情報場」という演算領域を持っていて、現実の物質に付随する情報を計算で変えて強化したり変化させたりする「情報学」がある世界を描いていたので、魔法科に於けるエイドスの書き換えはこういうものなのだろうなーと思いました。魔法式が”情報学”における数式なのでしょう。
(φシリーズを知っていたがために事象に纏わる情報を書き換えることで事象を書き換える、という考えに抵抗がなかったのだ、とも)
また、文庫版1巻で帯や解説を書いている川原さんの作品、「アクセルワールド」に出てくる「心意システム」が(魔法科の魔法ほど理屈っぽいものではないのですが)「自分の中のイメージ力で現実を上書きする」といういようなもので、厳密には「物質世界としての現実」ではなくて「ルールの定められたプログラムされたゲームにおける仮想世界」なので「現実」というか、「定められた事象」とでも言うべきなのかもしれませんが、とにかく意志とイメージ力でその世界を書き換えるという点で似ているのかなーと思っています。(賛否は色々だと思います)
AWではどちらかというと「ゲームのシステムは何故プレイヤーの仲のイメージを拾えるの?」というほうが気になりますし、やはり現実は肉体と意識が強固に結びついている、我々の知る物理法則が支配する世界のようですし、細かいことを気にするとあまり…まあ、なんでしょうね。はい。
他にイメージで世界を変える、と聞いて私が思い浮かべる作品として、Fate/stay nightがあり、その主人公、士郎の投影魔術を思い出します。
彼は自分の中の内部世界から取り出したイメージを投影する魔術と、その理由(というか原因?)の、限りなく”魔法”に近いとされる固有結界の魔術を持っていたわけですが、心象風景で現実を塗りつぶす固有結界は「世界の修正」が云々する中で「塗りつぶしている」わけですから、やはりイメージ力が世界を書き換えるという点が近いのですよね。書き換える仕組みについて省かれている代わりに、「世界の修正」という考え方があって、常に世界から圧力がかかるというのは面白いと思います。
で、ぐだぐだと言っているのですが、ここまで飛ばさずに読んでいると分かると思うのですが、魔法科の「世界を上書きする」ための理屈は、私が今まで見てきたほかの作品より圧倒的に、細かく密に繊細に設定されているんですよね。設定厨が好きにならずにいられないわけです。
川原さんのAWでもBMI(Brain Machine Interface)が発達した社会がどう変わるか、ということをチラチラと見せてくれていることにいつも感動しているのですが、魔法科においてもまた、魔法が科学となった世界で変わること、そして魔法と関係なく科学の発展で変わりそうな社会のことを見せられるのがとても楽しいです。
地球のたどった歴史が違うので、「露出を避ける」等の時代を遡るような意識の変化についてはあまり現実では期待できそうにありませんが、魔法を抜きにした科学技術は我々の住む現実世界でもありえるわけなので、そういう未来を見せてくれる小説としてもとても楽しめました。「こういうことを実現するための研究ってもう誰かしてるんだろうか?それとも、実現できない/しない理由を誰か見つけただろうか?」と考えるとわくわくして仕方ありません。
「こういうことにわくわくするのは、SFを読むのに向いているのではないか」と比較的最近に思ったのですが、それをそのままひっくり返して、この作品も「魔法が科学となった世界」を描いたSFと思うことができるということなのかなーと思いました。