私が死んだ夢

私の友達は魂と肉体の間の繋がりを断つ力と、その魂に形を与える力と、そして心を持ったインキュベーターだった。エネルギー回収のノルマなど構わず、人の形をとり、人間として暮らす、 余りに優しい生き物だった。

それまでの経緯がわからないのだけれど、私と私の友人複数名がどういうわけか、悪者を捕まえようとして手痛い返り討ちに遭い、一人は命を落とし、一人は片目を失い、私は昏睡したまま数ヶ月目覚めない大怪我と、最も呪わしい犯罪の痕を残されることになった。
意識が回復したらあまりの事態に当然、叫び喚き暴れるがもうどうにもならない。
気が触れたような有り様でも時間は過ぎて、呪われた命が腹から這い出ていった。
狂って意志疎通のままならない娘より、たとえ卑劣極まりない理由で生まれたものであっても孫の方がわかりやすく可愛かったらしく、親は来なくなった。いたはずの友達はめいめいの人生があり、心の壊れた人間に割く時間はない。親族からは存在しないものと扱われた。
地方の精神病院に移され、三年ほどたった頃、珍しく見舞いに来た親戚や友人に驚いていたら、親戚に毒殺された。苦い飲み物を渡され、嫌がっていたら好き嫌いが直らないのかと平手打ちにされ、仕方なく飲んだところ、意識が混濁して倒れた。すぐには死ななかったが、助かる見込みはないと医師が言った。
毒を飲ませた親戚は、精神が壊れ、回復の見込みがない(なにせ今までも一度として医療は私を助けなかった)人間にかける金が惜しかったらしい。
健康だった頃から死にたがることもあったため、狂人の服毒自殺として処理され、あとは心臓が止まるのを今か今かと待たれるだけの命だった。
そんな死にかけの私の元にやってきたインキュベーターの友人は、魂を体から離せば、君の魂の肉体の影響で壊れた部分は補修できる、と言った。本人の願いが、魂を魔力に変換させるのならば、他者が願いつつ魔力を注げば魂は形を取り戻すが、肉体を失った状態では世界に留まるのは難しいだろう、とも。
そうして、私は優しい友人の手で心臓を止め、幽霊のような魂の形を与えられた。

死んでしまってから思ったのが、HDD消去できなかったのが嫌だなということと、誰よりも人間を大切にしていた友人に悪いことをさせてしまった、ということ。

死んでから時間が経つにつれて私は忘れられて 、それに伴って薄くなった。
私がいない世界がなんら支障なく、寧ろ却ってスムーズに回るのだと確認して、私は無に帰った。
自由な空に飛んで行った。

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